秘湯めぐりのきっかけになった温泉の一つ。何もなかった斜面を雑木林に変え、渓流を流すことで日本の原風景を再現しました。ブログの全体メニューに戻る(→Top page)第111章 熊本県・黒川温泉・山河(再訪)-1-Chapter 111, section 1, Kumamoto prefecture Kurokawa onsen Sanga -1-
Japanese information:
山河English information:
Rypkan Sanga2016.9.15-16
111.1 はじめに (Opening remarks)
2010年7月に山河に宿泊して衝撃的な印象を受けました。黒川温泉は湯めぐり温泉街で有名ですが、「旅館山河」は温泉街外れの川沿いの敷地にあります。
露天風呂や貸切風呂など多彩な温泉を楽しめ、鬱蒼とした雑木林の中に小さな渓流が流れ、日本そのものを象徴した宿です。黒川温泉で行きたい宿は他にもたくさんあるが、山河の思い断ちがたく再訪を決めました。111.2 復興割キャンペーン 2016年4月に熊本地方を中心に激烈な大地震が起こった。断層のズレが原因だから被害は狭い地域に集中していて凄まじい。益城町の様子はシリーズの最後に報告します。
「がんばろう熊本」でクマモンが歓迎。

8月の上旬に突然「Visit熊本県」というサイトで「九州ふっこう割熊本宿泊券」というキャンペーンのことを知りました。なんと旅行券が70%オフで入手できるという。1枚5000円(チケットレス)を3割の1枚1500円でネット発売された。
上限は一人6枚(計3万円)、3割の1500円を6枚(計9000円)で入手し、一箇所5枚まで使えるもの。多分3枚15000円を2泊しなさいということ。使用期限は9月末まで。
これが21万枚発行された。企画者負担は1枚3500円だから、総事業費は3500円×21万枚=7.35億円。旅行者は旅費、食事、お土産にお金を使うから、風評被害を越えて賑わいを取りもどすに違いない。いい企画ですね。
ところが発売はネットのみで当日はアクセスが集中してサイトに繋がらず、翌日諦めかけていた夕刻になって偶然入手できた。多分、全国、近隣県の方々がネットで買い求めたものと思います。111.3 敷地の佇まい 小雨の中、夕刻に到着したら、傘を持った方々が出迎えていただきました。車に傘を差し出し荷物も持っていただき感謝。宿へは坂道を下ります。
・ 灯に照らされた雑木林、山河ワールドの入口です。

・ エントランスには「日本秘湯を守る会」の提灯。

・ 鬱蒼とした雑木林に苔むした庵と囲炉裏。以前と比べて佇まいが一段と深みを増していました。あたかも100年前からそこにあったように。

・ 敷地の中には小さな渓流が流れています。日本は森と水の国です。


・ 上流は急峻に、下流は穏やかに。



・ 途中には水車と洗い場、そこには大きな魚が泳いでいました。

・ 川沿いにはテラスの月見台もありました。

111.4 黒川温泉の感動秘話 他の温泉街は雑然とした混沌にあるなかで、黒川温泉は町全体のテイストが統一統合されている。かつてはごく普通の温泉街だったのが、なぜ、そこまでできたのか、について紹介させていただきたい(経過は順不同)。
外観で言えば、かつては「一畳も二畳もあるような赤や緑の個人看板が周辺に300本ほども乱立していたのを、個人看板をすべて撤去しました。その代わりには、景観に合うような共同看板を作りました」
そして「旅館と旅館の間にブロック塀があったところも壊して雑木を植えました。」つまり「山にある自然を温泉街に引き入れて、山の自然と温泉街をつないだ有機的な街づくり」をめざされた。
その雰囲気は「田舎らしさを活かし・・・昔からこうだったんだろうな」と感じさせる統一感を醸し出されるように工夫された(街・建物の外観や色)。「作為性がない素朴さ」
とも言われている。
最初のコンセプトは「黒川温泉離れ屋点在構想」で、物理的な配置を言葉にしたもの。これに対して行き着いたコンセプトは「黒川温泉一旅館」=「道は廊下、各旅館は部屋と考え、黒川温泉の全体を『一つの旅館』と捉える黒川温泉の改革ビジョン。」これは、全体の「気持ちのあり方」も象徴している名言ですね。
改革されていく過程では、約20軒の旅館のなかでは「相当な反対」もあったそうである。結果を見れば、なぜ反対だったのかと今なら不思議に思うくらい。
しかし信念を持ったリーダーが率先垂範し実績を地道に出しながら、賛同者が増えていったそうである。全体は動かなくても有志が先導して結果を出せば他の方々も着いてくるもの。
看板を変える、木を植える、ビジョンを作る、その原動力は関係者の「思い」ですが、黒川温泉というより一般の中小企業の場合、何をするにも「金がない」という言い訳が出てしまう。「金がない」という感想は何か「変えるのは面倒だ」「自由にさせろ」という気持ちだけでなく、なにか他人事のような意識が潜んでいるのではないでしょうか。
しかし、金がなくてもやる気があれば外部資金を活用する手立てがあるわけで、それらをうまく活用された。それは日本の中小企業群の経営改革にとても参考になる。よく言われるように、金がないのではなくやる気と知恵を出せればいいですね。111.5 旅館山河の感動 旅館山河は温泉街の外れにあって大きなハンディがあった。しかも、資金もなく投資もできなかったそうである。しかし、時間をかけて雑木林を造り、(かつてはコンクリートの枡だった)水路を自然の流れに再現され味のある自然な敷地にされた。この歴史にはびっくり。
宿の位置も本来なら斜面を降りていくというのはハンディ、しかし、それをむしろ活かして味のある雑木林、渓流、控えめな照明で工夫された。
初めて訪れた方はもともとそんな場所に作られたと思ってしまうだろうが、実は歴史があるのである。黒川温泉の出典はこちらです。ワタクシ、これらの話にいたく感動しました。
野沢温泉、渋温泉では外湯めぐりが、白川郷は景観保全が、仙仁温泉は与えられたハンディをむしろ生かす経営がそれぞれ思い浮かびました。111.6 情景再現 余談ですが、情景再現について。こちらは福島県の大内宿の通りでお酒を売っている方、昔ながらの服装で昔の情景再現です。

札幌にある「北海道開拓の村」では昔の郵便屋さんとかいろんな職業の方が当時の服装で村内を歩いていました。すると温泉街で昔の貸衣装を(できれば無料で)貸し出して温泉街を闊歩してもらえたら、闊歩する人も見る人も結構面白いと思います。京都で芸妓になって散策するのだって日本人に限らず人気なのだから、黒川温泉で試験的に実施したら(お金はほとんどかからない)、日本人だけでなく海外の人にも受けるかもしれない。温泉
山河1号泉が混浴露天風呂・もやいの湯、女性露天風呂・四季の湯、薬師の湯(内湯男女別)、貸切風呂の六尺風呂、山河1号泉と2号泉混合が貸切の切石風呂、桧風呂。
・ 黒川温泉・山河:1号泉:単純硫黄泉(硫化水素型)(低張性中性高温泉)、49.3℃、pH=6.1、蒸発残留物695mg/kg、成分総量884.5 mg/kg、2号泉:ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉(低張性中性高温泉)、湯出量380リットル/分、73.1℃、pH=6.5、蒸発残留物1472mg/kg、成分総量1695 mg/kg、
・ 内風呂男女各1、露天風呂混浴1、女性1、貸切風呂3。このほか、部屋付きの温泉あり。
・-2-は館内と部屋を紹介。(Continue to next report)

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