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上の湯・銀婚湯の感服 -1-

お気に召せば下をClick!


秘湯中の秘湯である。宿泊者専用の四つの貸切露天風呂、そこまでのアプローチとそれぞれの強烈な個性、設計者の意図、感服いたしました。ただただ感謝!(「日本秘湯を守る会」から厳選)

デジタルブック「北海道・上の湯温泉・銀婚湯」を公開しました。

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第10章 上の湯・銀婚湯の感服 -1-
2011.9.18-19

10.1 はじめに

 「上の湯」と聞いてわかる人は相当な秘湯通である。しかし、「銀婚湯」と聞けばわかる方も多いと思う。北海道南部いわゆる道南、八雲町よりやや函館寄りに落部(おとしべ)という町がある。ここから、落部川を遡ること10分で上の湯に着く。少し前に「下の湯」がある。銀婚湯という一風変わった名前の由来は、巻末に紹介する。この秘湯の特質は「銀婚」とは何の関係もないが、銀婚の年に、本州からも訪れる人も多いという。結婚という人生最大の賭け事になんとか生き残り、仲睦まじい夫婦として25周年に訪れる。

 銀婚湯に行くには何かのついでという訳には行かない。函館からは車で1時間半ほどであるが千歳からは3時間弱かかる。銀婚湯に行くという目的のために行くことになる。「秘湯感動紀行」ではいくつかの思いで深い秘湯を紹介してきた。しかし、ここ銀婚湯は、このような秘湯があったのかと、半ば驚愕、実に感嘆してしまった。その理由をこれから紹介してゆく。北海道の方は幸せである。

10.2 銀婚湯まで

 落部インターから降り、3kmほど函館方面に下り、JR落部駅付近から道道67号から南に行く。道の両脇には酪農家が多い。下の湯を通過し、じきに上の湯付近に近づく。訪れたのは9月中旬、いわゆる麦秋(ばくしゅう)、米が実り黄色が美しい時期であった。雨は小雨、これもラッキーである。雨の露天風呂は深く美しいからである。

・ 道の両脇の麦畑。
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・ 米が実っている。
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・ 右側に看板があった。スピードが出てうっかりすると見過がしてしまう。
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・横には風情のある看板があり、ほっとする。
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・ 入り口から岩畳の道に入る。向こうが見通せない。いい感じである。
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・ 橋っぽいところの左側は池になっている。
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 つまり、ここは橋であって、向こう側が銀婚湯というわけである。早速、ここで一区切りさせたいのだな、という意図を感じる。仙仁温泉を思い出してしまう。しかし、銀婚湯の館主はなぜここに池をつくったのであろうか?

・ ここを過ぎると宿の前にロータリがある。
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 うっそうとした林になっている。後で述べてゆくが、銀婚湯の植栽は手を加えて自然を再現しているが、徹底的に時間軸で企画された自然である。時間軸についても後で述べる。

・ 宿に到着する。実は、右手の森が、露天風呂への入り口になっている。
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・ 宿のすぐ右側には水盆(手水)があり、新鮮な水が注がれている。
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10.3 館内

・ 宿のエントランスは風格がある。
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・ 提灯が掲げられている。ほっとする。
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・ 館内の紹介はあまりしないが、落ち着いている。このスペースには暖炉がある。冬はとても気落ちよいであろう。
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・ 館内には花が配置されている(2枚)。かなりセンスがよい。バックヤードにかなりの手練がいるはずである。
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・ 屋内の吹き抜け:館主の意思が表れている。
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・ 部屋から外を見る。森だけである。安心する。
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・ 目を下に落とすと小さな小川が流れている。庭師も凄腕だ。
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 まず宿にあがるとスリッパがない。よってそのまま歩くことになる。スリッパがない宿には時々出会うが、共通した哲学がある。まず、すべての通路、階段が清潔に保たれていることである。次は、足音がしないことである。スリッパはぱたぱたと音がするものである。部屋にいて外を歩く音はほとんどなかった。これらがきわめて心地よい。部屋も広かった。

10.4 庭の林に迷い込む

 そこまでのアプローチがすばらしい。ここは宿から徒歩で約10分!かかる。ちょっとあるな…と思いつつ宿の入り口から向かう。玄関を出てすぐ左手に門があり、露天風呂への入り口となっている。ここまでは普通であった。しかし、一歩足を踏み入れ、歩き始めたとたんただならぬ気配を感じた。先ほどの門は異空間への入り口だったのである。実は庭の中はさほど大きくはない。しかし、小さな流れが至る所に配置されている。苔むした岩、ちょろちょろと流れる水、石の橋を渡る、あるいは、石のステップを歩く、様々な道筋が用意されている。どちらに行けばよいかわからない十字路がある。どちらでもよいのである。

 歩く人の目線を考えて植栽と岩、水が設計されている。植栽は株立ちが多い。このため、空間をほどよく見通せる設計になっている。そして、道筋はわざと遠回りをするように仕組まれている。この時点で、心臓を鷲掴みされた気分になる。私の好みを見抜いているかのように、先へと導かれる。「あなたはここから自然の一部になる」と予告される。まず、参りました。

・ 庭および露天風呂への入り口。
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・ 沢水が流れている。
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・ 苔蒸した岩たち、石や岩の正装は苔である。
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・ 石橋を渡る。
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・ 建物付近:雨に濡れた小石が輝いている。
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・ 石も苔も共生している。
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・ 林の中のこのような道が続く。
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10.5 「トチニの湯」に向かう

 「トチニの湯」は銀婚湯の貸切露天風呂の中で一番人気という。本や雑誌でも紹介されているので、見た方もあると思う。歩いてゆくのだが宿泊者専用に4つの露天風呂がある。「トチニの湯」「もみじの湯」「ドングリの湯」「かつらの湯」である。中でも圧倒的な存在感があるのが「トチニの湯」である。
 先ほどの庭の林を抜けると、館を右手から回り込む道に出る。ここから標識に従って歩みを進める。

・車よけの杭に猿の腰掛けが生えている。
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・吊り橋への案内がある。
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・ 吊り橋は、鉄柱の赤が印象的だが、そのことよりも少し揺れる細い吊り橋が楽しい。ここを渡れというのだ。私はひょいひょい渡ったが、連れは慎重に渡った。少しは揺れるのである。下は川。
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・川幅は広く、悠々と流れている。
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・渡りきると対岸に宿が見渡せる。なかなか立派である。
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・渡ったところに、次の標識がある。左が「もみじの湯」右が「どんぐりの湯」、直進が「トチニの湯」である。
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・開けた道を歩く。
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・トチニの湯の標識がある
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・さらに歩く
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・白樺林の中に入ってゆく。
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・ 次の林を左に見て緩やかな坂を下る。
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 さて、ここまでで気づかれたでしょうか。林が美しく管理されていること。これは人工的に植林したものであろう。つまり、広っぱに年月をかけて植林してきたのである。これは時間のかかることである。子供や孫たちのために植林するのは、じつは「林業」の心である。私は親戚が林業であったので、その心がなつかしい。館主は、林業のためではなく、宿泊者のために、20年後、30年後を設計しているといえる。

・下ったところと「トチニの湯」の入り口がある。
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・この手形を門の内側からかけると鍵になる。
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10.6 「トチニの湯」

ここには二つの湯船がある、最初は大木をくりぬいた湯船、もう一つは、そこから数メートル下ったところにある四角のものである。まず、最初に目の前に大木をくりぬいた湯船が目に飛び込む。

・心がびっくりする湯船、その向こうは先ほどの川である。悠々と流れているので、川のざわめき音は小さい。
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・ この構造の湯は他の温泉にもある。福島県「三斗小屋温泉」にあったような気がするのだが「トチニの湯」のイメージは、この場で大木が倒れ、そこに湯船を作ったという情景を想起させるように仕組まれているようだ。
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・ 湯船は大きく、二人がゆったり入れる長さがある。
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・ 右方向から見る。
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・ 湯船に入り向こう側を見る。森も緑が美しい、その樹間からは川が見える。
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・ 湯船に映った緑、これはすばらしい。
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・ 見上げると大木が、こちらを見ている。
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・ 天上の葉は一枚一枚が重ならないように手を広げている。
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なんという贅沢、なんという一体感だろうか。大木の湯船、森と樹木、川、三位一体の至福の秘湯である。とにかく浸っている間、ため息だけが漏れ出た。湯温もちょうど良い。連れは、奥の川縁の湯船に入っている。

大木の湯舟から右手に目をやると、もう一つの湯船が見える。ほんの数メートル、石のステップを下った所にある。

・ 川に一層近い場所にある湯舟。こちらも森がうっそうとしている。
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・ 大きさはこの程度。二人で十分な大きさがある。
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・ こちらから、先ほどの大木の湯を見る。圧倒的な緑!
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・ 川を見ると、樹々の影が水面に映っている。
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・ 山側は少し暗いがこの通り。
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突然、ボトッと音がした。上から何か落ちたようだ。どこに落ちたのかわからなかったが、湯船の近くに実が落ちていた。

・落ちてきた栃の実。栗のようだが栗ではない。
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 そういえば、「トチニ」とは何か、実は「トチ」とはトチの実を指し、そして「トチニ」とはアイヌ語で「栃の木」を言うのだそうである。自宅に帰って、芽が出るか水に浸すことにする。たしかに、湯船の横の頭上には栃の木があった。この露天風呂は「栃ノ木」がコンセプトであったのか。なんと風情のあることかと感嘆した。栃ノ木自身が上からこちらを見下ろし、「我ここにあり、今日は一つプレゼントだよ」とささやいたようだ。相変わらず、まだ雨がしとしと降っている。この美しさ、たまりません!

さて、続きの−2−では「もみじの湯」「どんぐりの湯」「かつらの湯」を紹介する。

「銀婚湯」の由来(パンフレットから抜粋):上の湯温泉は数百年前からアイヌの人々が狩猟の時に汗を流していたとされている。江戸時代以降も熊笹で覆った無人の湯小屋だったようです。大正時代に川口福太郎がこの中州を開削し熱湯の湧出に成功したその日が大正14年5月で、大正天皇の銀婚式の日だったことから、福太郎の妻トネの発案で、自分たち夫婦の銀婚式も重ね合わ「銀婚湯」と命名した。


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