温泉おじや
こんばんは。蘊蓄のある軽妙な文とお見事な写真をいつも楽しみにさせていただいております。北温泉は、まだ温泉好きになる35年ほど前、12月末の土曜半ドン後に山歩き仲間で出掛けたことがありましたのでそのときのことを思い出しました。
雪の降る中、暗い坂を下って着いた宿で通された部屋の窓は凍り付いてあと1センチを残して開いたまま。持ち込み酒・つまみで食前の小宴会を始めると、薄い扉と狭い廊下をはさんだむこうの調理室から言い争う声が。
「いくらこんな宿に雇われた俺だって調理人の意地がある、客に出すキャベツの千切りを、袋に入って仕入れたものなんか出せねぇ!」
「そんなこと言ったって味なんて同じだしいちいちヒトタマから切ってたら時間がかかって定時に客にメシを出せねえ」
「味が同じ訳がない、断面の乾いたキャベツ千切りなぞ出しても客に残されてそのまま帰ってくるだけだ!」
「宿の経営のことも考えろ、この料金ならでは来てくれるお客さんだっていっぱいいるんだ!」
「キャベツ千切りの手間代惜しんで旨いものなぞ出せっか!やってられん!」 ※ガラガラッ、バシーンッ! ドタドタドタ・・・。
我々は部屋で酒を飲みながら「これはご主人が正しい」「いや、料理長の言うほうがもっともだ」と批評しあっておりましたが、部屋に50分後に夕食が出されたとき、薄い豚カツは冷え切ってました。(※あくまで35年前の話です)